Global Master’s Program 2019 最終報告(矢崎 誠)

Global Master’s Program 2019 最終報告(矢崎 誠)

Global Master’s Programme (以下、GMP)の南アフリカラウンドが2019年2月25日〜3月20日にかけて南アフリカ・ヨハネスブルク大学で行われ、スポーツ国際開発学を理論と実践の両面で学習した。この国は歴史的背景から人種差別や貧困問題が根強く残っており、アパルトヘイトの撤廃から25年が経過した現在でも多くの社会問題が山積している。近年では2010年のFIFAワールドカップやBRICSへの進出などもあり都市部は著しく栄えているが、一方で農村部との貧富の格差は大きく開き、南アフリカ全体での失業率も27.1%(2019年1月時点)と非常に高い数値を記録している。この格差は世界最高水準とも言われており、長年積み重なった多様な問題が膨れ上がった結果であると考察する事ができる。

この様な社会背景の中で、GMPではオランダや日本での経験を踏まえて数多の社会問題を抱える南アフリカに対してスポーツを通じた貢献を行う為に、クワズールナタール州の農村部にあるGeluksburgに向かった。クワズールナタール州は貧困や失業に加え、HIV・AIDsの感染率が非常に高い地域であり、Sportstec CEOのMikeは彼らの生活を改善する為にスポーツの機会提供と雇用の促進を行なってきた。Sportstec社は2005年から継続的にGeluksburgに対して支援を行なっており、私達は今回研究者の観点から彼らの活動の質的調査を行う事が課題となった。

 

GMPの学生は現地の校長や生徒、村民らにインタビューを行い、Sportstecが地域にもたらす影響の実態解明を図ったところ、以下の5つの事が明らかとなった。

  1. Sportstecが導入した体育プログラムが学校教育の不可欠な要素となっている。
  2. Sportstec主催のスポーツ大会はGeluksburgが1年で最も盛り上がるイベントである。
  3. 学校現場の体育指導者は著しく不足している。
  4. 交通手段の確保も大きな問題である。
  5. Geluksburg集落での失業率は50%を超えている。

 

SportstecはGeluksburgに入ってから15年余の活動の中で、人々の暮らしを一定水準まで豊かにできた事がわかった。しかし、失業率等の大きな問題の解決にはまだ至っていない事も明らかとなった。今後はスポーツの力が効果を及ぼせる範囲を明らかにする事が課題となってくるだろう。スポーツ国際開発学は必ずしも原因と結果がはっきりと示せる学問ではなく、解を導き出す事が難しい分野であるため、我々研究者が今回のSportstecの様なケースをより深く調査する事で、実態を明らかにしながら国内外に発信していく事が大切だと考えている。

(Geluksburgに暮らす小学生と運動を通じて交流を図る)

 

私たちは今回実際に南アフリカの貧困地域に入り、調査を通じてスポーツと貧困の問題に向き合ってきた。現地には貧富の格差が根強く残っており、白人黒人と言った人種の問題も残っていることがわかった。今回の事例ではスポーツが一定の効果を発揮していたが、スポーツでは解決できない問題が世の中には数多くある事も事実である。我々のGMPの理念である”グローバルスポーツリーダー育成”に向けて、今回経験した世界中の問題や不平等から目を背けず、問題解決へと導いていく責務が私達には重く課せられていると痛感した。

オランダ、南アフリカ、日本とそれぞれ異なる背景を持つ人々と寝食を共にしながら、それぞれの国の地域コンテクストに基づく社会問題に挑んだ中で、世界中の様々な問題を目の当たりにしてきた。これらの問題に対して、一人でも多くの人に支援の大切さと必要性を伝え、一つでも多くの問題を解消できる様、スポーツ国際開発学の輪を広げていきたい。

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